情熱を持ってさらに前へ。もっとアホになるさわかみ投信(後編)

 さわかみファンドは今年8月で20周年。それを記念して、先月号では代表取締役社長の澤上龍と取締役会長の創業者澤上篤人に、さわかみ投信の創業当時のエピソードと今後の展開を、前編として語ってもらいました。
そして後編の今回。そもそもさわかみ投信の長期投資とはどういうものか、投資先企業との在り方や、今後のファンド仲間との関係についての想いを、今回も二人が熱弁していきます。

― 引き続いて、運用の話をお聞きします。10年前にリーマンショックがありましたが、その荒波を乗り越えて今はどうですか?

澤上篤人(以下 篤) あまりリーマンショックにこだわってほしくないんだよ。あんなのこれからいくらでも起きるし。

― 基準価額の推移などを見るとやはりこの時が大きく目立ってしまって…聞きたくなります。

澤上龍(以下龍) ああいう事象は説明しやすいからね。会長には悪いけど、せっかくの機会なのでちゃんと説明するよ。あの出来事によって我々は運用の本質を学んだように思う。忘れがちだけど、サブプライムローン問題が起こる前年にライブドアショックなど市場を揺らす大きな事象があった。買い一本やりだったさわかみファンドも、実は2005年前後の上昇相場でかなり売りを出していた。ファンド仲間から「上昇相場なのに投資しないばかりか、売りとはどういうことだ。俺たちの預けた資金が現金として寝かせられるなら、もはや運用じゃないだろう」と電話がかかってきたよ。また売り注文は証券会社に発注するんだけど、その証券会社からも「買いの間違いじゃないですか…さわかみさんのところが売りとはおかしい」って。でも黙々と株式を売却した。現金も積み上がった。そして、それをもってしてライブドアショックの暴落相場で買いまくった。ただ、2007年のサブプライムローン問題の時は、あまり積極的に買う気にならなかったんだ。なぜなら、我々は企業毎にここまで下がったら買おうという株価を設定しており、サブプライムローン問題ではそこに届かなかったから。まだ待とうと。しかし、「下がったら買うぞ」という会社としての宣言もあり、ファンド仲間からは大量の資金が届いたんだ。社内も雰囲気も、もちろん電話応対の社員も「買いまくってます」だった。言ってることとやってることに違いがあったら、それは嘘になる。まだ早いかな、と思いつつも運用として買いに入った。

― 運用の現場と社内の考え、発信に違いがあったのですね…。で、運用の本質とは?

 そう、違いがあった。だから、毎週のように電話に出ている社員を集めては、運用の考えを共有した。確か、会長もセミナーなどで「買いまくっている」と言ってたでしょ。

 言ってた。

 その発言に苦しんだ…(笑)。もちろん、翌年のリーマンショックでもう一段階下がるとは予想もできなかったし、「まだ買いたくないと思ってたのに」は、そのための言い訳でもない。先ほど言ったとおり、単に企業毎に設定した株価に届かなかっただけ。ただ、そこで大きなことも学んだよ。それは、運用とは運用だけで成り立っていないということ。つまり、ファンド仲間の皆さまと歩みを揃えることが運用の本質だということを。無秩序な暴落相場を買う姿勢に対し、「それでこそ、さわかみファンドだ!」とファンド仲間から追加入金が大量に届いたんだ。結果的にさわかみファンドはリーマンショックの早い段階で買いまくったわけだけど…。もしあそこで買い控えていたら、「下げたら買うとか言って、さわかみは口だけじゃないか!」となっていただろうね。その意味では、基準価額の下落について申し訳ない気持ちはありつつも、あの相場をファンド仲間と共に乗り越えたんだという自覚が生まれた。広義の意味での運用を知り、自分自身間違っていたんだと知った。時々、「リーマンショックの反省を生かして」という言葉を社内で聞くんだけど、それが運用だけの話であれば正しくない。運用としての対処法は過去に学ぶことは可能、しかしファンド仲間からの熱気を感じたら、単にマーケットだけでは語れないことの方が多い。直販だからね。リーマンショックを引き合いに「今後はこう運用します」なんて説明をしだしたら、もう運用じゃない。納得を集めるのが仕事ではなく、期待や信頼を背負い、孤高の挑戦を続けるってのが運用。ファンドマネージャーの草刈は10年先20年先を想い描いて好きに絵の具をキャンバスに塗りたくっていい。だから我々(会長・社長)も運用にはあまり口出しせず、社員も運用を説明したがらないことが肝要。運用者への信頼の方が大事。そもそもリーマンショックは過去の話。次の暴落に備えるといっても、次はあの頃とは違う。暴落の程度というだけでなく、ファンド仲間の皆さまや企業との関係性であったり、様々なものが違う。比較はできない。過去から学ぶのは大切だし、ウチには学ぶべき過去がある。でも投資は常に未来に対して行うものだから、そこは今日以降いかに本気で進めるかどうか。

― 以前と比べて、最近は10年後を見据えてどのように考えているかを勉強会等でも具体的に発信しているように思います。本業で地域や社会に貢献するなど…

 考えを伝えることは良いことだよ。でも、社員総出でしゃにむに説明しなくてもいいんじゃないかな。実際に行動している事実があるので、きれいに説明するのではなく方向性や魂に触れるだけでも十分。全社員が金太郎あめのように説明すると、逆に自信のなさを感じてしまうよね。そもそも後で結果がついてくるわけで、その時に世の中に気づいてもらえればいいんだ。

 説明することでウチの運用調査が止まってくれちゃあ困るんだよ。同時にファンド仲間の皆さまも説明に喜んでもらったら困る。

 社員がセミナーやご縁の窓口で答えるときに、ウチのファンドマネージャーの想像力が半端なくて、僕には説明はできないけどすごいんですよ、となるのがいい。社員が答えられないレベルというのが一番の理想だね。

 別に社員一人ひとりが掘り下げて知ったところで、運用しているわけではないんだから意味がないじゃん。分かった気になったところで、その時には、もっともっと先に行ってしまっているから。投資というのは将来の納得に対して現在の不納得で行動をする。皆が売っているから株価はボロボロになっているけど、そこを俺達は買い向かうんだよ、そんなの説明のしようがないじゃん。なんでこんな時に買うんだ、大丈夫なのかと不安で真っ青になるぐらいがちょうどいいのよ。こちらはニヤニヤしながら買っているわけ。ニヤニヤしているふてぶてしさについてきていただいた皆さまは後になって、やっぱあいつらすごいな、やることやっているなと納得してもらう。要するに、成績が出ると確信を持ってやっているわけよ。しっかり将来を読み込んで価値の高まる企業を皆が捨てているときに買っているんだから、どこかで株価が上がって成績が出るに決まってるじゃん。それを淡々とやっているわけ。さすがさわかみファンド!と皆にほめられていたら最悪なのよ。だから今はちょっと説明しすぎ。そういった意味では、腹の据わったおもしろがれるような社員がほしいねえ。

 説明力よりも未来を想像して楽しめる人物…事業経験者というのがイメージに近いかな。先のことなんて誰にも分からない。でも、こうしたいんだって強い想いがあって、それを果たしていく方法を探りながら必死にやっている感じかな。評論家ぶったら、計画を立てろとかリスクがどうだ、体裁がどうだとなってしまうけど、そうではなく、おもしろがって突き進んでいくような人。10年後なんて分からない、だからワクワクして想像しないと。それがおもしろい。

 それが長期投資。

 ファンド仲間の皆さまが、さわかみの連中また何か始めたけど、と疑問を持つぐらいがいい。分からなかったものが、時間が経った時になるほどとなるぐらい。今は疑問を解消しすぎる雰囲気があるのかな…やはり。
― たとえば、昨年外国株を組み入れたときに多くの質問をいただきました。方針が変わったのか気にされているようです。

 そういう質問にあまり丁寧に答えなくていいよ。多くの人は今を基準にして考えてしまう。我々は先を見据えているから、納得を求めてはいけない。むしろ大きな夢を語らないと。ファンドを始めた当初からフルディスクローズでやってきている。こんなに正直に出しているところは他にないよ。うちは長期投資。10年先20年先を見て行動している。今のことはレポートですべて報告している。はい、これでいきますよと、そんな感じでいい。投資だから将来は分からないわけよ。分からないことを知ったかぶりしたら意味ないじゃん。それは無責任極まりないことだよ。責任を果たすために必死にリサーチをしている。でも残念ながら今はボロボロに売られているので語ったところで分からない。外国株だってそうだ。今はこういう運用をしていますと、レポートを見ればわかる。ものすごい正直だと思うよ。

 …納得を求める必要はないけど、でも外国株が入ったこと、それとアセットアロケーションは違うことくらいは言ってもいいのでは?

― さわかみファンドがはじまって20年を迎えようとしています。今は社長の澤上龍、会長の澤上篤人の二人がいる。これから200年300年と考えた時に、さわかみ投信の本質として何が残りますか?

 我々が残しているのは方向性。これをやっていく、これ以外はやらないよということ。例えば運用成績の競争はしないとか。他は好きにやればいいし、我々は我々でやる。競争し始めると長期投資ができなくなる。ボロボロのポートフォリオを是としてそれで結果が出ている、この図式はとことんやってもらう。見栄えの良いポートフォリオをつくろうと思ったら、今は評価されるけど結果は出ない。
 運用面で発展したと感じるのは、企業との関係が変わってきたところかな。投資先企業との関係が、さわかみ投信との間だけだったのがファンド仲間とも共有できるようになってきた。企業に付き合っていただけるようになったという点では大きな成長だと思う。

 この10年で投資先企業との関係ができた、ようやく。ここからさわかみファンドが10兆20兆となってきたらもっとすごいよ。さわかみファンドの一つひとつの行動が社会的に影響力を持つようになり、発信力になる。企業に物申すとかはやらないけど、投資家として行動する。ど素人の自分達が企業に乗り込んでいって、ああでもないこうでもないとか言うのっておこがましいよね。数千人規模の企業なんて、そう簡単に舵を切れない、そんな簡単に変わるわけないのよ。経営者の苦しみが分かっていない。本当は、企業さんと静かな会話を大切にする。さわかみファンドが大きくなって1000億円単位で保有したとすると大株主になる。その大株主がなぜ買っているのか分かってきた。では、ずっと応援してもらうために、企業の方からどう思いますかと話しかけてくれ、静かな会話ができるようになる。本当の株主とはそういうもの。

 企業のことを考えずに物申す株主が増えたよね。企業を知らずに責任も取らないくせにこうあるべきだということを押し付ける風潮がある。我々も必要に応じて企業とお話しすることはある。でもその内容を判断するのは企業だし、その判断をもってダメな企業だとかいうわけじゃないよね。企業にもそれぞれ事情があり時間がかかる。言わなくてはならないことは言う、けれども身内のような言い方をする、寄り添う。こうあるべき論で物事を語る人とか議決権行使を代行する会社に任せるとか、それはどうかと思う。株主の権利や義務を放棄しているだけだから。

さわかみ投信、投資先企業、ファンド仲間が一堂に会する運用報告会の様子。

― 運用についてお話を聞いてきましたが、今後のファンド仲間との関係についてはどうでしょう?

 お会いする時も、レポートでもなんでもいいんだけれど、期待していただけるだけの力をもって接しないといけない。我々は常に時代の2~3歩先を歩けるように努力し、ファンド仲間の皆さまから、お前ら任せたぞと言っていただける存在でありたい。

 どんどん周りを巻き込んでいくようなね。

 顔を見せて満足するのではなく、本気で頑張っている感じ、心や魂が伝わる方がいいね。あと、以前と比べてさわかみファンドが複雑になっている。昔はすごくシンプルだったから、株価全般が安くなったら買って長期でお持ちくださいと伝えていたけれども、今は課税口座と非課税口座があったり、ややこしい。
 考えて落としていってもいいね。

 あらゆるニーズに応えることはサービスではないと思っていて、唯一のニーズに絞り込んでいくことこそ真のやるべきことだと考えている。成績という実績と、そして世の中を面白くするという期待感だけ残し、あとは削ぎ落としてシンプルにするのが一番。色々な制度を使いこなしたり知っていたりすることを世の中では金融リテラシーとか言うかもしれないけれども、それは間違っている。行動力を伴う、知っているだけでなく動ける状態にならないと。あまり考えなくてもいいんですよ、買い方もこれで大丈夫ですよと言える状態が最高のサービスではないかな。結果、一人ひとりがファイナンシャル・インディペンデンスに到達しているのが目的なのだから。

 我々はものすごい勉強をしないといけないし、働かないといかん。そしてお客さまにはシンプルに最高なものをお届けする。それが最高の仕事ってもんだよ。

 そもそも投資信託とは、お金に働いてもらうことを任せ、家族や仕事、趣味に集中してくださいというのが役割。それなのに、あれやこれや様々な制度で迷わせてしまうのは違うよね。さわかみファンドを保有することで未来をつくることに参加しているという感覚を持てる。そういうファンドになりたい。財産づくりができることを前提に、自分が投資したそのお金がめぐりめぐって世の中をつくっている、自分が能動的に関与していると思っていただけるファンドにしたいと思う。未来に向けて一緒に歩んでいる仲間…そういう意味でお客さまをファンド仲間と呼んでいるんだよ。

 こいつらに任せておけば、おもしろいことがあると思ってもらいたいね。我々はどんどん前へ前へと良い世の中をつくり続けようと動いているじゃん。気づくとファンド仲間の皆さまと一緒に良い世の中ができているんだ。青臭いことを言っているけど、けばけばしくなくていいじゃん、すっきりするよねと思っている方達も巻き込んで進んでいくと、もうこれ自体が良い世の中なんだよ。さわかみと行けばもっと良くなる、そうやって広がっていくといいね。

 ファンドを起点に、皆が期待するような良い世の中ができてくると本当におもしろいよね。我々はそれを信じ、絶対にそうするんだという覚悟を持って毎日を大事に頑張らないとね。