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「零式戦闘機」
柳田 邦男著
文藝春秋

 いわずと知れた「ゼロ戦」の開発物語。宮崎駿さんの「風立ちぬ」の主役である堀越二郎設計主務者ら三菱名古屋航空機製作所の技術者たち、それに海軍の技官やテストパイロットたちが苦心惨たんして、世界をはるかに凌駕する戦闘機をつくり上げていった様子が生々しい。
 当時の日本は、飛行機の性能を決定的に左右するエンジンの開発が遅れていた。エンジンの馬力が欧米先進国に比べて、いつも20~30%も少ないという条件の下で、飛行機の性能を相手よりもよくしようという無理難題に挑戦していったのだ。
 たとえば、こんな記述がある。
 設計の立場から見たとき、戦闘機が爆撃機や偵察機などと、いちばん違う点は、格闘という荒々しい運動に耐えられるだけの強度を持たせなければならない。
 いたずらに強度を大きくしようとすると、飛行機が重くなって所期の飛行性能が得られなくなる。「強く」しかし「軽く」という二律背反の要求に、どこまで応えられるか…。
 こんな記述もある。
 過渡期というものは…その渦の中にいる者にとっては、時代の流れを見通すことは極めて難しい。豊富な情報と鋭い分析力を持った者のみが…。堀越には、ばくぜんとながら、先進諸国の航空機が大きな曲がり角に立っているようにみえた。(複葉機から低翼単葉機へ…筆者注)
 経済事象やマーケットはいつも揺れ動いているが、後になってみると大きく変転してしまっていることが時折ある。歴史的な変節点を感じ取っていくのも、まさに長期投資のベースとなる「広く深く遠く考える」である。

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