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オオカミが日本を救う
生態系での役割と復活の必要性
丸山 直樹 著
白水社 出版

シカが激増し、日本各地で山林を荒しまくっている。シカは牛と同じく、4室の胃でもって強力な消化能力を発揮し、毒性のある少数の植物以外はすべての植物を食べ尽すまで増え続けるという。
葉っぱはもちろん樹皮もどんどんはいでは食べていくシカの食害で、森林はまる裸にされ、生態系も破壊してしまう。山林の保水力は失われ、山の斜面からは土砂が流れ出していく。ひどい惨状だが、これもひとえに頂点捕食者オオカミの絶滅と、狩猟者の高齢化によってシカは増加する一途となっている。
米国のイエローストーン国立公園では、1926年にオオカミが駆除された。その後エルクジカなどが爆発的に増加し、森林や草原を食害した。多くの野生生物が減少したり絶滅に追い込まれた。そこで、1995年~96年にカナダ西部から31頭のオオカミが再導入された。結果、エルクなどの数が大幅に減り、いろいろな生物が復活してきた。オオカミ効果による生態系の回復がはっきり認められるという。
古来から日本ではオオカミが頂点捕食者として君臨し、その下にクマやシカやカモシカなどが生活していた。豊かな森が育まれ、小動物も一杯いた。オオカミが日本の生態系を維持してきたわけだ。
長期投資は持続可能な社会をつくっていく最前線に位置づけられる。その一環として、日本の山林を守るためにも、そろそろ本気でオオカミを復活させる検討に入ってもいいのではなかろうか。

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