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新しいユーザー・インターフェースの登場はデバイス機器の世界的な普及に大きく貢献してきました。ユーザー・インターフェースとは、人間がデバイスと情報のやりとりをする際に使用される操作方式や表示様式のことを言います。マイクロソフトがWindows95に搭載したGUI(グラフィック・ユーザー・インターフェース)と呼ばれるマウスとアイコンを使った操作方式は一般家庭にパソコンを普及させるきっかけとなり、指による操作を可能にしたタッチパネル方式はスマートフォンやタブレットを世界中に浸透させる大きな要因の一つとなりました。
 
そして近年アメリカを中心に世界中で新たなユーザー・インターフェースの実用化が進められてきています。アップルのSiriやアマゾンのEviといった音声でデバイスを操作するユーザー・インターフェースの他、手の動きで操作するLeapMotion、目の動きで操作するEyeTracking、さらには脳波で操作する脳波センサーといったものまで登場してきています。これらはNUI(ナチュラル・ユーザー・インターフェース)と呼ばれ、従来のユーザー・インターフェースよりも自然で直感的な動作によってデバイスを操作できるといった特徴を持っています。新世代のユーザー・インターフェースと呼ばれるNUIの登場は、今までにない新しいデバイスを世界中に浸透させるとともに、インターネットを介して「何時でも・何処でも・誰でも様々な情報やサービスを利用できる」ユビキタス・ネットワーク社会の実現に向けて重要な役割を担っていくでしょう。
 
モノとネットの融合
 
人間だけでなく、車・工場・発電所・ビル・家・家電といったモノも主体的にインターネットに繋がる時代が到来しつつあります。実際に人がデバイス機器を操作するのではなく、モノ自身が自らの情報を自動発信していく思想で仕組みが構築され始めています。データを取得したい物や場所にセンサーやソフトウェアを埋め込み、WifiやLTEなどの無線回線を用いてデータをコンピューターに自動送信するといった仕組みです。コンピューターに集積されたデータ(ビッグデータ)は専用のアプリケーションによって分析され、その分析結果データは、サービスとして顧客に提供されたり、戦略立案や業務の効率化に活用するために企業経営者や現場担当者に提供されたりします。
 
この分野で特に注目されているのが2012年11月にインダストリアル・インターネット構想を発表した重電メーカーのGE(ジェネラル・エレクトリック)です。GEは〝モノとネットの融合〟技術を風力発電事業に活かしました。GEは自社で管理している全世界の1万2000基の風力発電用タービンにセンサーを埋め込んで、10分ごとにタービンの状態をデータ化して会社に送信しました。そして、そのデータを解析し、故障の兆候が発見されると、運転の停止や部品の取り換えなど必要な対処を行うことで、故障してからの修理に比べて約3000万ドルのコスト削減に成功したのです。またGEはインターネットを介して遠隔地から風力発電を自動制御する仕組みも構築しました。天候や風向き、風力などのデータを随時分析し、効率よく発電できるよう風力発電のブレードの向きや確度を自動で調整することで、発電効率を向上させたのです。
 
インターネット・オブシングス
 

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ユビキタス・ネットワークやモノとネットの融合といった社会が実現していけば、様々な場面で人やモノが情報を交換しあったり、サービスを提供しあったりするようになります。この人間同士で情報を交換するH2H(Human-to-Human)、人間とモノの間で情報を交換するM2H(Machine-to-Human)、さらにモノ同士で情報を交換するM2M(Machine-to-Machine)がインターネット上で組み合わさった環境がInternetofThings(以下IoT)です(右図)。マッキンゼー・アンド・カンパニーが2013年に発表した推計によると、2025年にIoTがもたらす経済効果は全世界で6・2兆ドルにもなるようです。
 
この様な巨大な可能性を秘めたIoTに対する取り組みで、私が最も注目しているのが、モノづくり企業のアフターサービスに対する取り組みです。理由は、競争力の源泉がアフターサービス部門に移り変わっていくと考えているからです。M2HとM2Mを導入することで、離れた機器の状態を知り、離れた機器を操作することが出来るようになれば、顧客に提供するサービスレベルは飛躍的に向上し、かつ企業自身にとっても自動化によるコスト削減のメリットを享受することが出来ます。また、販売面においても『その後のアフターサービスで採算がとれれば良い』という考えから、より安い販売価格を顧客に提示することが可能となり、業界シェアをより拡大していけるメリットも考えられます。
 
このような付加価値の高いアフターサービスを作り上げていくためには、状態をデータ化する機能と制御する機能を実装した機器内システムの構築が必要不可欠となります。そして、アフターサービスの必要要件をシステムに置き換える設計技術と、その機能を実装するプログラミング技術が、アフターサービスの品質を決定付けていくでしょう。また機器内システムは内製化することによって、他社と差別化を図ることが出来ます。それ故に今後はモノづくり企業であっても、如何に優秀なIT技術者を社内で育成できるかが投資判断の重要なポイントの一つになると考えています。
 
【アナリスト 岡田 知之】

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