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日本に眠るモッタイナイ資源は、ゼロ金利近辺にへばりつく現金・預金894兆円(個人金融資産の5割!)だけではない。食べられるはずの食品が年間500万トン〜800万トンも捨てられていると言われている。

 一方、日本の子供たちは6人に1人が貧困状況におかれ、生活保護を受ける世帯数は右肩あがりだ。
 モノは溢れるが、胃と心は満たされない成熟社会の歪み。その問題に正面から向き合う一人が河野さん(NPO法人フードバンク山梨)だ。企業や市民から寄付される食品を、生活に困るご家庭に届ける。一人ひとり異なる閉ざされた窮状に耳を傾け、働く意欲を引き出す。「モッタイナイ」を「ありがとう」に、そして「自立」へと導く河野さんが長期投資を始めたきっかけは、お金に余裕が「ない」からだった。
ないものは、ない
 「収入が不安定で、何とかしたかった。お金に稼いでほしかったんです。2001年、図書館でさわかみ投信を知り半信半疑で始めました。すぐにマイナス、失敗だと思って悶々としました。」
 その後、米国テロやITバブルの崩壊が押し寄せさらに下がった。なぜ続けられたのか?
 「損するのが嫌だったんです。積立は授業料だと思って。ただ、さわかみレポートを読んでいるうちに社員皆さんの顔が見えるようで安心しました。発送作業は社員総出とか、ちゃんとした会社だなって。」
 結果として暴落時を買い進み、必要な時にしっかり利益が出た。リーマンショック時は動じず「買うほど購入単価が下がって、気持ち良かった。」とむしろ積立金額を上げた。
  河野さんは何事も走りながら考える。フードバンク山梨で働く前は東京で7年、新聞配達をした。
 「20代半ばに『故障した脳』という本に出会った。精神病の原因は脳だと。病や命を学びたくて拙い英語で著者に手紙を出した。すると返事が届き、大学院で聴講の許可を得るや米国に渡りました。」しかし、入学は果たせず失意の帰国。「日本の医学部に入り直すにも、お金がすっからかん。だから仕事と住む場所がある新聞配達をしながら東京で浪人を始めました。」そして7年、結果を出せず地元山梨に戻り放送大学で社会福祉を学んだ。「好きだったんですね、すんなり学べた。近所のスーパーで働きながら、炊き出しや難病の方々を見守るボランティアをしながら今の仕事に出会いました。」
共に歩む

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▲食品仕分けを行う作業場。
元々スーパーだった場所を活用している。

 「フードバンク山梨は月2回、県内で生活保護を受けていない困窮世帯に無償で食品とお手紙を届けます。国の制度から抜け落ちたり、地域の眼が気になって公に助けを求められない人がいる。お孫さんと二人暮らしのお祖母さんが『夜中に起きたら孫が空っぽの冷蔵庫の前で立ちすくんでいた。』現実がある。行政や地域の学校と連携を取りながら、見えない貧困を解決したい。」

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▲各地から集められた食品はボランティアの手により、
各世帯の人数や状況に
合わせて仕分け・箱詰めされていく。

 その先に河野さんの夢がある。「精神障がい者のクラブハウスを作りたい。日本ではまだ普及していませんが、入居者自身が運営者となって対等に自治をする。支援をする側と、される側が固定された社会ってギスギスして嫌だなって。誰もが支え、支えられる存在。問題が起これば全員で向き合う。一歩踏み出そうとすれば、寄り添ってくれる人がいて、自分の強みを生かせる場。投資も同じじゃないですか。投資をする側とされる側が共に社会に価値を生み出す。クラブハウスで何を生み出せるか分からない、でも生み出すチャンスを作りたい。」

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▲スーパーに設置された「きずなBOX」によって、
近隣の住民は買い物と同時にいつでも気軽に
食品を寄付することができる。

 福祉に携わる河野さんの原点は、フィラデルフィアの路上でクッキー売りをする少女との出会いだという。「ホームレスは汚くて、怖くて、自分と関係ないと思っていた。実際、窃盗や恐喝がある。ただ彼女は違った。『家族と幼い兄弟を養っているから買ってほしい。』という彼女を無視する私に『Anyway thanks for hearing me』と残し去った。とても礼儀正しい挨拶に、胸が苦しくなった。私には彼女が本当のことを伝えているように聞こえたのです。」

与えるでも、与えられるでもなく、それぞれが自らの意思で行動し、互いの力になる。そんな自立した個人、企業、団体による豊かな社会、共に長期投資でつくってまいりましょう!

【直販部 佐藤 紘史】

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NPO法人フードバンク山梨
社会福祉士・精神保健福祉士
河野 有良 様
南アルプス市を拠点に食料の無償提供、就職補助等を通じ生活困窮者の自立を目指す活動に取り組まれている。

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