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はじめに
 
 2016年6月、2020年度から実施予定の次期学習指導要領において小学校のプログラミング教育の導入が政府の新成長戦略に盛り込まれたという報道がありました。私は大学で総合情報学部というなんとも曖昧な学部でプログラミングを学び、大学院では分析や解析のために当然のようにプログラムを書き、日頃のトレーディング業務でも自身のアイデアを表現するためにプログラムを書いたりします。そして気が早いのですが、10月末に生まれてくる娘にも小学生になったら自由研究などで一緒にテトリス(1980年代から1990年代初めにかけ、世界各国で大流行したコンピュータゲーム)を作り楽しみながらプログラムを学ばそうと考えています。小学生に対するプログラミング教育の必修化の賛否は分かれると思いますが、プログラミング教育の必要性については薄々と感じている方は多いのではないのでしょうか。
 
プログラミング教育の必要性
 
 先進国で生活をしているとプログラミングにおける知識の必要性を感じることが少ないと思います。現状では知識がなくても生活に困ることはないかもしれません。しかし、最近は様々なものが自動化されています。昔の工場では大勢の人達が働いていました。技術の進歩や安全への配慮や人件費などのコストカットにより自動化が進み、広い工場に数人のオペレーターという状況が増えてきています。今後、すべてのものがソフトウェアで動く時代がやってくると考えると、それをプログラミングで制御するものは益々増えていきます。そういう意味で(どのプログラミング言語を学ぶかという選択が重要であると思いますが)共通言語を学ぶことで様々な機会 を得られる可能性が広がります。ではプログラミング教育を導入したイスラエル(四国程の大きさの)を見ます。経済の規模でも日本よりも小さいのですが、米国NASDAQへの上場企業数は米国に次ぐ2位で日本よりも1桁多いのです。その背景にあるのは、最先端のプログラミング教育であり、日本の数学、国語並みの時間を費やして中高生がプログラミングを学んでいることにあります。国の置かれた状況からセキュリティー・軍事分野が特に有名でCGやネットビジネスなどの他分野でも広く活躍しています。時代の流れに対応する個人レベルの問題だけでなく、日本という国が世界のIoT競争に勝つためにも上記の例からプログラミング教育は必要と考えます。
 
危機感を感じる世代
 
 冒頭に2020年から小学校においてプログラミング教育導入と書きましたが、実は2012年の新学習指導要領により、中学校の「技術・家庭」において従来選択科目であった「プログラムと計測・制御」が必修科目となっていることをご存知でしょうか。気付かない間に進んでいますが、文部科学省の教育実践ガイドを見ると、さらに深く学ぶ世代はこの2020年以降の小学生たちです。この小学生が社会人になった時の我々世代への影響を考えてみます。2020年に6歳の小学生が大学を卒業して社会に出てくるのが16年後の2036年。つまり、現在20代~40代の社会人の皆様は当然のようにプログラミングを学んだ世代と一緒にビジネスをすることになるだけでなく、その頃には上記で述べたように全てがソフトウェアと繋がると考えると少なくともプログラミングを今からでも学ぶ必要があり、プログラミングの知識がないと生き残れない日が来るのかも知れません。またお子様の質問に答えるためにもやはり学ぶ必要がありそうです。
 
心が折れやすいプログラミング学習
 
 小学生のプログラミング教育は教える側と一緒に学ぶ仲間がいるため、教育次第では何とかなると期待していますが、私が危惧するのは今から学ぶ危機感を感じる世代に立ちはだかる大きな壁です。それはプログラミングが独学で学べる環境が整っていないことです。国家戦略として進めるのであればプログラミングに関わらない職種の人が必要にあわせて学べる環境をまず構築する必要があります。独学でプログラミングを始めるとまず”HelloWorld”と出力させられあまりにもつまらなく、大半の書籍は全体像が見えず難しい言葉が並び挫折するには最適な環境が整っています。この点を解決することがプログラミング教育導入の架け橋であり、最大の課題だと私は考えます。
 
【運用調査部 前野 宏明】

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