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▲図1:就学前教育に対する支出の対GDP比(2005年、2010年、2015年)国公立及び私立教育機関

子ども・子育て支援新制度で変わる保育サービス

2015年に子ども・子育て支援新制度が実施されました。目的は待機児童対策、子どもの預け先を親の働き方で分断しない幼保一体化や幼児教育の振興にあります。幼保一体化によって、共働きを辞めて親の生活が変わっても、子どもを同じ施設(認定こども園)で保育できるようになりました。2017年に制度改正され緊急プランの実施で、地域ぐるみの小規模子育て拠点や事業所内保育所の認可基準と助成制度が決まり、保育の定員増が急速に進みました。一方、定員増に見合う保育士の不足が続いており、17年末の東京都の保育士有効求人倍率は6.6倍、全国平均は3.4倍、大都市圏での保育士不足はより深刻になっています。保育士不足解消のため、給与加算、子どものいる保育士の預け先充実や潜在保育士の復職支援が行われていますが、追いつかないのが現状です。地方では少子化、首都圏では保育士不足にもかかわらず保育料は国の公定価格によって決まるので、定員充足率が低い保育所は人件費率が高くなり、経営の安定が難しくなっているケースもあります。

先進国中でも遅れている教育無償化

内閣府調査では、若い世代は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」ことを心配しており、教育費への支援を求める声が多いという結果です。諸外国で研究されているように、幼児期の教育水準の向上が将来の国民所得の増加につながることからも教育への社会投資は重要です。図1のように、日本の就学前教育に対する支出はGDP対比0.2%で、OECD加盟国平均の3分の1に過ぎず、教育の52%が私費(内家計負担は65%)で賄われています。フランスやドイツでは3歳まで育児休業の権利が保障され、共働きやひとり親など親の事情に関わらず、全ての子どもの養育を確保する保育所、登録チャイルド・マインダーやベビーシッターを掛け持ちで利用できるよう政府支援が充実しています。質の高い環境への公平なアクセスと、家庭環境が不利な子どもの保育や教育が不利にならないようにする仕組みが日本は遅れています。また、外国人にも安心できる保育・教育サービスは、海外からの労働力にも必要なことです。働き方改革には子育て環境の整備が必要条件です。

▲図2:幼稚園と保育所の子ども一人あたりの費用負担(年額)の状況
出典:文部科学省 子ども・子育て支援新制度の解説 公定価格と私学助成との比較

教育無償化、働き方改革による成長産業

政府は10月実施予定の教育無償化の財源額を、幼児教育・保育に7764億円、高等教育に7600億円、合計1.5兆円との試算を公表しました。10月から認可保育所や幼稚園に通う3~5歳児は全世帯で原則無料、認可外保育所は上限月額3.7万円、0~2歳児は住民税非課税世帯が無償化の対象となります。該当年齢人口は5歳まで年齢ごとに約101万人で、段階的に無償化が進みます。文部省の子ども一人当たりの教育費用の試算では、保育の実質保護者負担は月額2.7万円です。これを基にすると、5月に新元号で誕生する子どもが5歳になる迄に、子育て世帯の家計支出は、保育無償化により月3万円弱は消費余力が生まれることになります。子育て関連消費市場、教育、スポーツ、習い事や子どもと一緒の遊び場やイベント造りは、家族の時間価値を高めるためにも有意義な消費先といえます。「保育・教育の基本料を完全無償化」することで、有償サービス市場の成長を促進することになり、独自サービスを展開する民間企業には成長のチャンスが訪れると思われます。遊び場イベントや学童クラブの民間受託、夜勤のある職業の親のための保育施設、フリースクール教育などは社会から充実が望まれる事業です。複数の保育・教育施設が利用できるクラブも利便性が高いサービスです。
5年後には鉄道会社やスポーツクラブ、学習塾などの異業種参入が促進され、働き方改革によりニーズが生まれ新しい教育サービスが雇用を産むでしょう。全ての子どもが安心できる居場所づくりに貢献する産業は、安定した内需によって支持され持続的な成長が期待されます。

【シニアアナリスト 歌代 洋子】

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