成長企業への長期投資~私見

企業価値と株価~これまで

25年前(1994年)の株式市場は、89年末の日経平均最高値38,915円から92年8月14,309円まで63%も下落し、バブル崩壊の調整局面が続いていました。日本証券経済研究所の「日本の株価水準の変動に関する研究」(1991年)では、株価ボラティリティ上昇の理由として ①指数裁定取引の増加で銘柄間の連動性が高まり、ヘッジを利用する機関投資家のタイミングの影響が高まる ②恐怖心から投資家がパニック的に行動し、個別銘柄の連動性が高まる ③機関化現象で、同じ規制で同等な情報力で判断する投資家の影響力が高まった可能性がある、と分析しました。株価に影響する要因は予想ファンダメンタルズ、投資家心理、株式需給、投資家構造に分類できると考えられていましたが、バブル崩壊の前後は個別企業のファンダメンタルズよりも市場要因に議論が終始していました。

私は、株価変動の基本要因は予想ファンダメンタルズで行い、株式市場の調達資金は生産性の高い設備投資に回され中長期利益の向上をもたらし、長期的な株価水準と企業価値は一致すべきと考えていました。そこで「予想ファンダメンタルズが良い企業が株式市場で本当に評価されるのか」を確かめるため、「会計的投資価値要因と投資リスクの実証研究」を論文にまとめました。幾つかの方法で実証分析を試み、その中で単純ですが今も普遍的と思えることを紹介します。

先行研究※1で、1971~88年のPER、益回り、キャッシュフローイールド、PBRと時価総額について、毎年度の各指標のランクでクラス分けしたポートフォリオのパフォーマンスを時系列分析した結果、キャッシュフローイールドの相関が高いと認められ、キャッシュフロー創出力のある企業の株価は高く評価されていました。「産業に関わらず、個別企業の予想ファンダメンタルズは株価に反映される」ことを前提に、当期の株価と前期のEPS、BPS、PCFRとPBR※2について、1972~91年度まで20年間、毎年の日経平均採用210社をクロスセクションで分布を検討しました。その結果、70年代には株価と無相関だったBPSは86年から91年には有意性が認められました。BPSは株価を60%以上説明できる関係にあります。したがって、短期的な乱高下があっても株価は企業価値の成長を反映すると考え、経営力のある企業に着目しました。この25年間も未曾有の金融ショックがあり簡単な利益成長はあり得ませんが、結果として企業価値と株価が相関して上昇している企業を見つけることができます。では、これからも長期的に企業価値が高まる企業とはどのようなものか?企業の成長を促す社会環境の変化を考察してみます。

SDGs2030への取り組み

内閣府地方創生推進室は今年10月までにSDGs未来都市60とSDGsモデル10事業を選定し、産学官連携の実証事業や評価事業を各地方の事情で進める構想を発表しています。選定都市では自治体の運営ルールで推進企業が連携し、場合によってはコンソーシアムで市民にSDGsを普及し、事業が規律的に進むことで省力化や省資源化投資が促進すると思われます。

環境課題では生分解性プラスチックの普及が注目されます。日本は世界でも廃プラスチック回収率が高く、リサイクルや焼却処分に回される現状において、理想的には生分解性プラスチック容器をコンポスト施設や土に漉き込み、分解を促す分別回収が望まれます。EUの廃プラスチック対策は生分解性プラスチック普及が先行して検討されてきましたが、EU理事会は使い捨てプラスチックのカトラリーやストローの流通を2021年で廃止する指令で合意しており、スターバックスは既にプラスチックストローの廃止を発表しています。化粧品はワンウェイ容器が主流ですが、欧州企業を中心にリサイクル容器の基準統一化SPICE※3が始まり、本格的なパッケージのイノベーションが期待されます。ロクシタン社は09年から循環型リサイクル容器を導入し、2025年には100%再生PETの循環型リサイクル容器にシフトする計画を発表しています。ユニリーバなどの欧米日用品や飲料メーカーはリサイクル業者と共同で使用済み容器を回収し、リフィルして何度も使う循環型プラスチックボトルの導入計画を発表しており、効率的な省資源化モデルが消費財の産業界で始まる見通しです。※4

日本の家庭から出る一般廃棄物のうちプラスチック容器の容積比は約4割と高い割合を占めており、容器削減の手法では、紙の利用やリサイクルしやすいモノマテリアル化があります。プラスチック不使用においては、約10年前からGMSのレジ袋有料化が始まり、来年4月にドラッグストアやコンビニのレジ袋有料義務化目標を控えています。中国製マイバッグは51回目でCO2排出量がレジ袋と同じになり※5、持ち歩きのライフスタイルの変化も予想されます。環境投資に携わる企業は収益機会に加え社会的価値の高まりが期待でき、そのような企業の価値の高まりを待ちたいと思います。

【シニアアナリスト 歌代洋子】

 

※1 Fundamentals and stock returns in Japan, Journal of Finance, vol XLVI No5、 December1991
Chan, Hamano, Lakonishok(1991)
※2 EPS(一株あたり利益)BPS(一株あたり純資産) PCFR(株価キャッシュフロー倍率) PBR(株価純資産倍率)
※3 SPICE、Sustainable Packaging Initiative for Cosmetics
※4 ペプシコ社ペプシコリサイクリング
https://www.pepsicorecycling.com/ Partnerships/News
※5 LCAを考える。ライフサイクルアセスメントの考え 方と分析事例、一般社団法人 プラスチック循環 利用協会