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本便りが皆さまのお手元に届き、お読み頂いているであろう7月15日、その深夜24時よりサッカーロシアW杯の決勝戦が行われます。国際サッカー連盟によると、前回のブラジルW杯決勝は家庭で20分以上視聴した人数6.95億人、外で見た人を含めると10億人以上の視聴者を集めました。また大会全体では、世界207ヵ国、21億人と世界人口の30%弱の人々が観戦をしたようであり、大きな市場を築いています。
そのような傍ら、国際サッカー連盟は今年8月に「FIFA eワールドカップ2018」を開催することを発表しました。これは世界中で大人気のサッカーゲームである「EA SPORTS FIFA 18」を用いて世界一を決めるFIFA公認のゲーム大会です。これが今回のテーマであるeSportsです。“e” はelectronicの略であり、eSportsとは「競技性のあるコンピューターゲーム」を意味します。長期投資だよりでゲームの話題を取り上げることに違和感があるかもしれません。しかし投資家として時代の流れに敏感になり好奇心を持つことは非常に重要なことであると筆者は考えます。

普及著しいeSports

GPU世界最大手のNVIDIAやゲーム調査会社superdataによると、世界のゲーム市場規模は、2016年でおよそ800億ドルであり、そのうちeSportsのシェアは今のところ1%強に過ぎません。しかしながら成長率は高く、同市場規模は2014年6億ドルから2017年15億ドルになりました。2022年には23億ドルへの拡大が見込まれています。
ゲームの概念はここ数年で大きく変化してきました。従来の居間で家族・友人とともに遊ぶものから、自室でインターネットを介して友人・不特定対数のプレイヤーとコミュニケーションをとりながら楽しむものになってきています。eSportsではRTS(Real time strategy)、FPS(First person shooting)、対戦型格闘ゲーム、オンラインカードゲームといった競技性の高いジャンルが採用され、伝統的なスポーツと同様にファンである観戦者や視聴者を魅了する内容になっています。Newzooによると、世代別ではミレニアル世代の視聴率が他世代に対して有意に高く、全体の15%が視聴しています。男性に限定すればベースボールの20%に比肩し、同世代での人気の高さが伺えます。
今やコアなPCゲーマーは世界に4億人、eSportsの有名なタイトルであるLeague of Legendsの競技人口は9,000万人も存在するようです。世界における伝統的なスポーツ競技人口は、バスケットボール4.5億人、サッカー2.5億人、クリケット1億人強、テニス1億人、ゴルフ6,500万人、野球3,000万人ほどであり、もはや競技人口においては伝統的なスポーツに引けを取りません。

次世代の文化となるか

文化として定着するには、何世代にも渡って継続される歴史が必要です。当然ながら競技者、ゲーム開発会社、スポンサー、ファンが一丸となって市場を盛り上げていく必要があるでしょう。とはいえ、eSportsはすでに2022年に中国で開催されるアジア競技大会のメダル種目に加えられています。また世界的にはプロゲーマーに対してアスリートビザが発行され、eSportsをプロスポーツとして認知する動きが出ています。eSports後進国である日本においても、法務省が海外選手2名に対してプロアスリートビザ(興行ビザ・基準3号)を発行しています。2024年夏季オリンピックの競技種目としても検討されているようであり、世界的に注目度は高まっています。
現在では洗練された印象のある伝統的なスポーツも過去には粗野なものと扱われていたように、eSportsに対する印象もただのゲームからIT化社会における歴としたスポーツへ変化したとしても何ら不思議ではないでしょう。

投資対象として

さわかみファンドにゲーム関連株をはじめとした娯楽産業銘柄は組み入れられておりません。それは将来に亘って持続的な需要が存在するであろうと判断できないところや、社会的意義、将来の理想とする社会の姿において本当に必要であるかに確信を持てないところに理由はあります。どこかで理念や運用哲学と合致しているとは言えないのではないかと思ってしまいます。
しかし筆者はその存在を否定はしません。人生を豊かにするといった点において、音楽や絵画などの芸術や伝統的なスポーツはなくてはならない存在であると思います。しかし誤解を恐れずに言えば、「遊びの延長線上にある仕事」と言えます。これらもいつしか時代の変化とともに職業として成り立ち、社会的に認められる存在となりました。まさに時の審判であり、新たな世代の人々による時代の風なのです。

【シニアアナリスト 坂本 琢磨】

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