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【佐藤紘史(運用調査部)へのインタビュー】

SEKAI WO TUNAGU
~左官と長期投資、心と頭で汗をかけ~

左:運用調査部 佐藤 紘史 右:取締役直販部長 水上 成憲

シリーズ「さわかみ投信で働くということ」今回は、左官職人の見習いから当社へ入社した運用調査部の佐藤にインタビューしました。

 

就職するまで

水上 職人から金融の道へ舵を切る人は少ないと思うのですが、どのような就職活動をされたのか気になります。

佐藤 中学生の頃、海外で働くための就職辞典を寝る前に何度も読み返していました。当時から「広い世界で働きたい」 という思いと「何者でもない自分が何で食っていけるのか?」 という不安が常にあったんです。高円寺の焼鳥屋で住み込みのバイトやアフリカのNGOでのインターンを通じて、人に必要とされるか、何を目指すかが大事だと気付かされました。両親は「いつ大学にいっているのか?」と心配し、祖父が「犬も歩けば棒に当たる」 と言い放ちました。大学4年で何とかあるベンチャー企業に内定をもらいました。

水上 なぜ入社しなかったのですか。

佐藤 留年してしまったからです。就活後、欧州を放浪する中ネットカフェに立ち寄ると、親から一通のメールが届きました。「Ryuunen-Tsuuti ga Todokimashita(留年通知が届きました)」

水上 え!? 相当ショックだったのでは?

佐藤 内定先と親には本当に申し訳なく、謝りました。同時に、義務教育から就職まで続く見えない螺旋から降りられた事に安堵し、「一生をかけて何をしたいのか?」を周囲の目から離れて初めて己と向き合いました。

水上 その結果が左官職人への道だった?

佐藤 はい。フィレンツェである靴職人と出会いました。薄いカーテンの奥に見たことのない端正で優美な靴が並ぶ。その小さな工房兼店舗に入るや彼は胸を張って言いました。「ここの靴のことなら何でも俺にも聞いてくれ」と。生まれ故郷の村に靴を直す人がいないから靴屋を始めたこと。美しい靴づくりを目指すうちに、貴族や世界的な俳優から注文を受けるようになったこと。必要とされることを追求し、丹精を込めて技や人間性を磨き続ければ、国籍や出生を問わず世界に通じる。そう教わりました。そして帰国後、就活中に出会った左官の親方に見習いをさせてほしいとお願いしました。地球上で最も多く用いられる建材の一つが土であり、日本の四季と刀鍛冶を礎とする鏝(こて)、そして日本人の美意識が育んだ左官は世界有数であること。その技術を身に付ければ、どこでも働ける。そう背中で示す親方に職人として、また人として憧れました。

 

職人への道を断念

水上 なぜ職人の道を辞めたのですか?

佐藤 根性が足りなかった。叱られることに耐えられず、親方の下を飛び出しました。全てが愛情だったと今はハッキリ分かる。「嘘をつかない」「スカっとした仕事をしろ」「一から十を知れば千でも万でもいける」「頭で身体を動かすな、身体で頭を動かせ」「逃げるな、感じろ」…親方が叩き上げてくれた人生の土台のおかげで“今”の私があります。

 

出会い

水上 当社との出会いは?

佐藤 20歳の頃、澤上会長(当時社長)が登壇する授業に友人の誘いで参加しました。

水上 どんな印象でしたか?

佐藤 迫力があった。当時、起業家は世の中の先端を行く、またはニーズを先読みして流行を作り出すイメージでした。ところが澤上は違う。「起業家は世の中に立ち向かっていくのだ」と言う。欧米の運用会社で身一つで戦ってきた澤上が、何をもって社会と対峙しているのか質問しました。

水上 どのように?

佐藤 「起業が世の中の逆風に立ち向かっていくことなら、教室にいる学生より暴走族の方が向いていませんか?」

水上 すると?

佐藤 即答でした。「違う。“族”では駄目だ。群れるな。一人で立ち向かっていくんだ」 と。世界で戦うとは、一人で行動を起こし、決意することだと目を覚まされました。

 

さわかみ投信への参加

水上 その数年後に当社に参加ですね。

佐藤 職人の道を離れた時、次のことは一切考えていませんでした。それでも食っていかなければならない。左官を世界に広める夢を抱きながら、半端者の自分をぶつけ、受け入れてくれる先をと思い浮かんだのが会長であり、当社でした。「長期投資でおもしろい世の中をつくる」「運用実績と顧客からの信頼で世界一を目指す」 「世界レベルの人材を輩出する」。そして「経歴不問」。飾らない粗野なホームページの募集要項に熱くなり「挑戦する思い」を送りました。

水上 すぐに入社されたのですか?

佐藤 はい。滋賀を発ち、都内でしばらくは兄弟や友人の家から通いました。その間、家財道具一式は会長の自宅で預かってもらい、引越し当日は社長をはじめ社員の皆が手伝ってくれました。

 

最後に

水上 佐藤紘史にとって働くとは?

佐藤 生きることと同義です。どんなことでも人の役に立ちたい、そのために汗を流したい。ただ、いかに汗を流そうと資本の差によって経済格差が広がっていく。ステイホームの影で現場に立ち続ける方々に賃金で報おうとも、企業や医療機関は収入が伸びなければ賃金を増やせない。他方、株式市場は将来期待で上値を切り上げていく。

水上 その状況でどうやって人の役に立てますか?

佐藤 さわかみファンドが世界経済の成長と、暮らしや家計を繋ぐ結節点となって力になれる。環境問題や貧困への対処を制約ではなく成長機会に、また強みとして利益創出する企業がある。そのような企業への投資を通じ、ファンド仲間にリターンを届けること。これはお金にも汗を流してもらう財産づくりであり、これからの社会参加の一つだと思います。その結節点の先となる企業調査を通じて役に立ちたい。自然と暮らしを繋ぐ左官、市場と家計を繋ぐ投資。いずれもすぐには結果が出ません。ただ、私たち次第でその未来は変えていく事ができます。その先で一人でも多くの方に喜んでいただくことが、私にとっての働きがいであり、生きがいです。

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