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日銀破綻
藤巻 健史 著
幻冬舎

長期投資家は、いつでも「ここから10年ぐらいの間に起り得るリスクは、すべて削ぎ落した行動」を心懸ける。いまなら、金利上昇とインフレ懸念がすぐ頭に思い浮かぶだろう。10年前のリーマンショックでひん死の状態に陥った世界経済は、史上空前の資金供給に支えられて、ヨタヨタしながらも回復の道をたどってきた。株式市場や不動産は金あまり投機のるつぼとなってきた。
それらが逆回転をはじめるリスクだ。金利上昇要因?米国の中央銀行にあたるFRBは政策金利を年3~4回のペースで引き上げている。ヨーロッパ中央銀行も来年からは出口戦略に入る。
インフレ?世界人口は2050年の97億人に向って、一日あたり17万8000人のペースで増え続けている。エネルギー・食料・水・工業原材料などの需要はすさまじい勢いで伸びていくわけだ。これは構造的なインフレ要因である。
そこへ日銀は異常なる資金供給に走っている。それがハイパーインフレにつながっていく構図は、本書に詳しく書かれている。
マーケットは大混乱に陥るだろうが、さわかみファンドは落ち着いたもの。たとえ金利上昇やハイパーインフレに襲われようと、人々の生活は続く。人々の生活を支える企業活動も途切れることはない。そこを押さえているのが長期投資の強みである。
ただ、本書で繰り返している円安論には同調しかねる。為替相場はゼロサムゲームだという点を無視している。円が200円まで売られたら、その相手方としてドルやユーロそして中国元は大きく買われることになる。果して、米欧中が自国の通貨高をハイハイと認めるだろうか?

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