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京都ぎらい
井上 章一 著
朝日新書

ふと手に取って、ニヤニヤしながら買って読んだのが本書。著者の京都嫌いは、洛中の京都人が誇示したがる妙な優越感に対する反発から出ている。それはそれで、読んでいておもしろい。
そういった優越感たるや、当人たちには大事なことかもしれないが、実はちっぽけなものにすぎない。千年の都といって歴史や伝統を誇ったところで、そもそも時の権力や財力には抗えない。洛中人たち自身、そのような歴史を経てきたわけだ。
彼らはそこに生まれただけのこと。それでも、ひたすら生まれの優越意識を後生大事に守ろうとする。自分の母親も京都出身、それも洛中もいいところ。なのに、一度京都から出てしまうと外者としての扱いとなる。
そのような井の中の蛙というか、なんとも料簡の狭い価値判断は、あちこちでみられる。早い話、会員限定の社交クラブなんてものが、欧米ではいまでも大いに幅を利かせている。これは、人間社会に共通の現象なのか?
われわれの長期投資は、いつでも普遍的な価値を追い求め、それをベースとした判断と行動を大事にする。具体的には、人々の生活だ。政治や支配体制がどう変わろうと、人々の生活はお構いなしで続く。そして、人々の生活を支える企業活動も一時として止まることはない。
時代がどう移り変り、権力構造がどうなろうと、長期投資の拠って立つところは岩盤として存在し続ける。そこにこそ、財産づくりの安心も安全もあるのだ。

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