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星の王子さま

サン・テグジュペリ 著

河野 万里子 訳

文春文庫

飛行機が実用化されて、まだそれほど時間がたっていなかった頃、サン・テグジュペリは職業パイロットとして空を飛んでいた。それまでの陸上交通や船などの海洋交通と比べ、飛行機はずっと速い。だから、郵便はじめ通信手段としての利用が広がった。
とはいえ、天候など気象条件の制約は多く、飛行機乗りは冒険野郎でもあった。サン・テグジュペリも飛行機野郎の一人で、そこから「夜間飛行」とか「人間の土地」の執筆につながった。
大空を、そして雲の間を一人で飛行機を操縦している間に、いろいろ考えたのだろう。当時は自動操縦なんてものはなかったし、飛行スピードも遅かった。大空の中、ずいぶん長い時間を一人っきりで過ごしている間に、「星の王子さま」はじめ、いくつかの小説の構想が練られたと思われる。
どうして大人は…、どうして大人になると…、と王子さまは疑問に思う。目に見えるものばかりに囚われてしまう大人たちの世界。それに対し、ものごとの本当の美しさを見つめる勇気。
これは長期投資につながる感覚である。われわれ長期投資家はいつも、マーケットとはつかず離れずの立ち位置を守る。それは、高い所にいる自分との会話でもある。
日々の喧騒の中で、ものごとの価値や本質がスポーンと抜けがちとなる。その点、現実にどっぷり浸った自分と、もう一人のいつも本質を求めている自分とが対話するのは、きわめて重要である。

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