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私の好きな言葉の一つに千利休の守破離がある。基本を習得した人だけが自分のオリジナリティを発揮できる、そんな意味だ。ゲルニカを描いたピカソのデッサン力の高さは有名だ。守破離のコンセプトは、古今東西その道を極めようとする求道者に共通する心意気なのかもしれない。

 

アナリストの仕事とは企業価値を見極めることだ。そしてこの仕事にも守破離がある。経営戦略と財務諸表の読込み、競合企業動向、政策の方向性といった机上の分析に加え、実際に企業を訪問し社風や職員の情熱といった無形価値分析を重ねる。こうした基本動作は「守」である。

ところがこの基本動作が窮屈に感じる時が訪れる。もっと我流の見方で企業を深掘りしたくなるからだ。そしてその時が基本を「破」る時だ。間違っても最初からオリジナリティだけを追い求めてはいけない。革新的で斬新なアイディアが単純な現状否定から生まれることはなく、保守の延長上にあると言ったら言い過ぎだろうか。向上心・探究心・責任感・使命感が備わっていれば、必然的に破に至る。これは個人に限った話ではなく、チームでもそうだ。我々運用調査部が組織として運用力の向上のために取り組んでいることは、金融アナリストと産業アナリストの融合である。これは我々が辿り着いた破の一つである。国内トップの研究者や技術者と接触し、新しい着想、研究、技術(seeds) を学ぶ。例えば熱の吸収を可能にする素材。再利用が難しいとされる工場排熱でも、熱を吸収させたこの素材を素材ごと移動させれば、別の場所に熱を運べる。運び込まれた熱を、誰が、いつ、どのように活用するのか、社会的な意味はあるのか、新しい産業の誕生の可能性はあるのか、企業の生産性は改善するのか等、一つのseeds をきっかけに広く、深く、遠く我流の思索を巡らす。

 

その思索は時に企業の再定義を我々に迫る。我々は常識を尊重しながらも、必要ならば大胆に常識から「離」れ、新たな視点で企業価値の再計算に取り組む。日本の重工業を支えてきた社会インフラ企業は、その知見を活かしコンシューマー企業へ生まれ変わるのではないか。デジタル技術と通信技術を取り込んだ工作機械メーカーは、コンサルティング企業に変貌するのではないか。技術の進歩や新発見は、企業を揺さぶり我々を揺さぶる。同じ見方で古い世界に留まったままではいけない。時には地図にはない新しいルートを開拓し目的地を目指す冒険も必要だ。知の冒険、アクティブ運用の神髄は間違いなくここにある。

終わりのない知の冒険

きちんと目的地へたどり着けたかどうかは5 年後、10 年後の株価が教えてくれるだろう。我々の見方に世の中が追い付くまでの時間はたまらなくじれったいが、ワクワクしながら待つほかない。待つ間に何をしようか。次の冒険の準備に取り掛かろう。私は自分を新しい世界に誘ってくれる知の冒険が純粋に楽しいのだ。それでいいじゃないか。さあ街に出よう、人に会おう、そして自分の頭で考えよう。この国には4000* 近くの冒険が用意されている(*2023/7/19 現在の東証上場企業数は、プライム1834社、スタンダード1441 社、グロース541社)。

 

【運用調査部 アナリスト 小宮 力】

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