Sawakami Asset Management Inc.

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先日、投資先企業との経営面談にて、「さわかみさんほど、しっかり調査してくれる投資家は見ないですよ」との言葉をもらった。有難い言葉と素直に受け取った。
長期投資家は企業調査を徹底的に行う。過去分析は当たり前、重要なのは将来予測だ。頭と心で“推”と“論”を掛け合わせ、いくつかのシナリオに落とし込む。その上で対象企業の工場見学や経営面談などを経て、企業の経営者になったつもりで将来展開の確度を高め、投資判断を下す(見直す)のだ。

相場に身を委ねるのが合理的で賢い投資だが

昨今は相場を読んでベットする投資が合理的のようだ。それゆえ、冒頭の「しっかり調査してくれる投資家は見ない」との言葉に繋がるのだろう。企業調査をしない投資手法の最たるものがインデックス運用である。相場を読むどころか、流れに身を任せる手法がゆえに。
投資家の大半がそうであれば、実質的に企業調査など不要となる。なぜなら、株価および相場はおカネの流れで決まってしまうからだ。相場を下支える存在も投資家を安心させる。以前なら日銀や事業法人(自社株買い)であり、現在もなお事業法人の買い余力は高い。それに加え、NISAという税制が個人の投資マインドを刺激し、強い地合いを形成している。
賢い投資家なら、すでに市場の変化を見極めて投資スタンスを修正しているだろう。しかし、相場の流れに注目する投資方法は実際のところ簡単ではない。世界情勢の変化に目を光らせ、今日買って明日売るなど疲れを厭わない覚悟が必要だ。インデックス運用はいい。つみたて投資という魔法に浸れるのだから。

世渡り下手でもいい、投資の王道を貫きたい

昨年、トランプ関税を15%で終結させた赤沢大臣が称賛された。実際、称賛されたかは知らないが、市場関係者の大部分が「よくやった」と安堵しただろう。しかし、よく考えれば称賛どころの話ではない。0%に近い関税を大幅に引き上げられ、しかも米国に80兆円を超える資金提供までも合意してしまったのだ。事業家であれば、それがどれだけ不条理なのかがわかる。米国向けの事業の営業利益が15%だとしたら、それが瞬時に蒸発してしまう計算だ(但し、実際に関税を支払うのは輸入先だが)。米国事業の不透明感を嫌気し、それよりも確定の15%の方が計算が立つ? それは市場関係者の論理だ。事業家には到底受け入れられない。
最強国である米国に尻尾を振っていないと、様々な意味で現代のグローバル社会で日本は生き残れない。そのような打算もあり、受け入れ難い合意に喜び、株価はスルスルと上昇を見せた。「ノー」と突っぱねられずに日本は靡いたのだ。経済損失は理解できるものの、心情的には、米国抜きの経済圏を考えるべき時だったと思う。時流に乗るのは利口な方法だが釈然としない。関税が違憲判決を受けた今、当事者たちはどう考えるのだろう?

筆者の意見はおそらく間違っている。いや、世渡り上手ではないと言えよう。しかし、正しいものを正しいと言えない生き方は悲しい。ゆえに相場だけが注目される投資環境となろうとも、「しっかり調査する」投資家であり、かつ「企業と共に未来を育む」投資家でありたいと切に願う。それが王道であり、我々の生きる道だから。無論、いずれ世の中が王道に回帰すると信じ、その際に背中を見せるのが我々だという自負を持って。

【2026.3.9記】代表取締役社長 澤上 龍

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