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浜松ホトニクス株式会社
豊岡製作所(静岡県磐田市)

誰もが知っているのにまだまだ謎が多い“光”へのチャレンジ精神で、新しい産業を生み出し続けている浜松ホトニクス株式会社。今回は同社・豊岡製作所を訪れました。

参加者の質問に答える
鈴木副社長

 


【Tour Report】
宇宙の成り立ちから健康診断まで
“光”の未知未踏に挑む浜松ホトニクスの挑戦

前夜から降り続いた雨が上がり、やわらかな日差しが注ぐ2月13日、私たちは22名のファンド仲間の皆さまとともに浜松ホトニクス株式会社(以下、浜松ホトニクス)の工場現場を訪問しました。
浜松ホトニクスは静岡県浜松市に本社を構える、売上高1,459憶円ほどの研究開発型の企業です。同社はこれまで“光”の未知未踏に挑み、その成果を医療や産業などの分野で役立つ商品に応用することで、光の技術のリーディング・カンパニーとして企業価値を高めてきました。その高い技術力は世界中のユーザーから高く信頼されており、同社は67年の歴史を誇ります。
本コラムでは当日の見学の様子とともに、浜松ホトニクスが成し遂げてきた社会への貢献と、光の未知未踏に挑み続ける同社の取り組みについて詳しくお伝えいたします。


製造現場見学

今回訪問した豊岡製作所では、光電子増倍管という製品の製造工程を見学しました。光電子増倍管とは、光を電子の運動、つまり電気信号に変え、それを増倍する管でできた機械です。弱い、微量な光をとらえられるほど、そして電気信号を安定的にノイズなく外部に伝えられるほど、その性能は優れています。簡単に仕組みを説明すると、光電子増倍管は光のエネルギーを電子の動きに変える光電面、その電子の数を数百万倍に増幅する電子増倍部、外部に電気信号を伝える電極でできています(図1)。

私たちが見学した光電子増倍管の製造工程は、主に特注品を作る工程だったため、職人の方々が自分の手と目を頼りに、光電子増倍管を作り上げていく様子を見学しました(参考:図2)。光電子増倍管は耐久品であるため、長い期間に渡ってユーザーが使い続けます。そのため、いくらカタログスペックが優れたものであろうとも、不良品が一つでもユーザーの手に渡ってしまうと、ずっと長い間迷惑をかけ続けることになります。浜松ホトニクスの光電子増倍管に対するユーザーの信頼は、正にその製造を担う職人の方々の手にかかっていると言ってよいでしょう。

▲図1:光電子増倍管の仕組み
引用元:浜松ホトニクス企業ホームページ
https://www.hamamatsu.com/jp/ja/product/optical-sensors/pmt/about_pmts/index.html

 

▲図2:製造の様子(写真:浜松ホトニクス提供)

 

商品展示室見学

併せて、光電子増倍管が医療、産業、学術研究などの分野で役立つ“商品”へと応用された展示品を見学しました(図3)。(ここで、“製品”と“商品”の違いについてご説明します。製品とは製造された品物であり、商品とは商売できる品物、つまりお客さまが買うだけの価値を認めた品物を指します)
例えば医療分野では、体の奥深くに在るがん細胞の位置や形を測定する診断装置など、産業分野では、環境にやさしいとされるハイブリッド自動車や電気自動車に使われるリチウムイオン電池の内部を検査する装置に、資源探査分野では、地中の岩石の中に含まれる石油を掘り当てる装置に浜松ホトニクスの商品が使われています。がん細胞やリチウムイオン電池内部の不純物は、少しでも見逃しがあると患者さんやドライバーの命にかかわるものです。石油探査は、一本のリグを掘るのに少なくとも百億円近くかかるため、石油鉱脈を見逃せば、それだけコストが無駄になってしまいます。浜松ホトニクスの商品は、わずかな見逃しも許されない厳しい水準が求められる装置に用いられており、それだけの信頼をユーザーから寄せられています。

 

▲図3:商品例(写真:浜松ホトニクス提供)

 

最高水準の眼で、世界の成り立ちを解明する

日本が世界をリードし、ノーベル賞受賞者も輩出する学術領域の一つに、素粒子物理学という分野があります。これは、「モノをこれ以上は細かくできないほどに切り分けていったとき、何がそこにあるのだろう?」という人類の素朴な疑問に答えを出す学問です。その「何か」を見るために、直径40mもの水槽を地中深くに埋めて、遥か遠くの宇宙から飛んでくるニュートリノという物質を捉えたり、一周が27㎞もあるドーナツ型の機械を使って光速に近い速さまで加速した電子を互いにぶつけてみたりと、小さなモノを見るために巨大なスケールの実験が行われています。
この極限の状態で素粒子を観察するために、世界中の研究者が頼りにするのが浜松ホトニクスの商品です。ニュートリノの存在を明らかにした水槽には、浜松ホトニクスの光電子増倍管が敷き詰められました(図4)。この光電子増倍管の性能は、月で懐中電灯をつけると、地上でその光をとらえられるほどです。このような極めて高い性能を追求することで得た技術力を医療や産業へと応用することで、先述の優れた商品が生み出されています。

 

▲図4:スーパーカミオカンデ(写真:浜松ホトニクス提供)

未知未踏に挑む

学術研究で高い技術力を磨き、それを産業や医療など、より市場規模の大きい分野に応用してダントツの商品を展開していく。これが、浜松ホトニクスの勝利の方程式です。そして、その先を目指して同社が力を入れているのが、“光”のビジネスを新しく立ち上げる起業家の支援です。
「光はまだ、未知未踏に満ち溢れている」という思いの下で、浜松ホトニクスは2005年に光産業創成大学院大学を開学し、2018年には新興企業に出資するベンチャーキャピタルを創設しました。これらの取り組みは、単に光の技術を開発するだけではなく、社会の困りごとを新たな光のビジネスで解決していこうとする同社の挑戦でもあります。
光は波であると同時に、粒子でもある―“光子”という真理の発見は、20世紀の物理学に大きな発展をもたらしました。この考えを応用して、強い力で物質をつなぐ“パイ中間子”という素粒子の存在を予言した湯川秀樹博士は、日本で初めてノーベル賞を受賞しました。そして光もまた、“電磁気力”という力で物質をつなぎ、この世界を創りあげていることが分かっています。
未来の浜松ホトニクスの企業価値もまた、社会の困りごと、光の技術、そして起業家をつなぐことで生み出されることでしょう。同社にとって未知未踏に挑むこととは、単に今まで誰も知らなかった光の性質を解明することだけではなく、社会にとって未知未踏の価値を生み出していくことでもあります。光に込めた同社の誇りと挑戦の歴史を、このツアーを通してファンド仲間の皆さまに感じていただくことができたのではないかと思います。(直販部 加地)


参加されたお客様の声

●見学して日本のものづくりはまだまだ大丈夫だと感じました。これからもオンリーワンの技術を磨いて社会がそして社員の皆さまが豊かになることを期待しています。

●さわかみファンドに投資している実際の企業が見れてとてもいい企画だと思う。ぜひほかの企業も見てみたい。大変勉強になった。定期的に参加したい。ほかのファンドはこのような企画をやっていないので凄くいいと思う。

●社員を大切にする会社であり続けてください。また匠の技を継承し、日本を代表する会社を期待します。

●初めてツアーに参加させていただきました。普段、見学できない企業を見ることが出来て有意義でした。ありがとうございました。

●なかなか、写真や書面だけでは把握しきれないことが、企業を訪れてみて、いろいろと分かったので、このような企画は非常に有意義であったと思います。ありがとうございました。

●ファンドに組み込まれている1つの企業に実際に見に行くことが出来て本当にいい機会でした。ありがとうございました。

●普段、入ることのできない所に伺えて、良かったと思います。会社訪問をして、さわかみ投信が応援する気持ちがわかりました。

●昔から興味があったので金沢から来ました。夢を実現しているイメージがあって、どんなところか楽しみに来ましたが、地道な努力を重ねておられるところがわかり、改めてすごい会社だと思いました。副社長のご説明に感謝します。


ツアー事務局後記

企業訪問ツアーに参加されるファンド仲間の目的は、投資を通じて応援している企業の存在意義を自らの眼で確かめることです。その意味で、今回の企業訪問ツアーの一つの解として「当社は社員を大事にする会社」という鈴木副社長の一言がありました。顧客が要求する高品質な電子管を製造するために高度なガラス加工技術が不可欠で、経験を積んだ技術者によるハンドクラフトが当社製品の独自性と品質を支えています。高度な加工技術を伝承するために、技術者を育てるには膨大な時間・費用を要します。「企業の成長は社員の成長と共にある」そのような企業と社員との関係性が浜松ホトニクス様の強みであると感じたファンド仲間はきっと多かったはずです。(直販部 岡澤)

 

 

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