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個人投資家がファンド(投資信託)を選ぶ時、専門家やメディアの多くが「手数料をしっかり見ましょう」と言う。それはそうだろう。自分が投資する商品にどれだけの手数料がかかるのか、知らずして投資するのは無謀と言うか危険である。しかし、そこで語られる手数料の説明には違和感を覚える。
基本的にファンドの売買には3つの手数料があり、個人投資家が支払うコストという点では相違ない。しかし考え方や役割がそれぞれ大きく異なる。資産運用ブームによって各社の手数料体系や姿勢が見直される今、改めて手数料の意味を考えてみたい。

 

販売手数料

分かりやすいのが“販売手数料”だ。ファンドを買う時の手数料であり、一般的に投資額の2~3%だろうか…個人投資家にとって全く意味のないコストである。例えば100万円を投資しようとした際に、最初に3万円も支払うのは極めて大きな損失だろう。それだけの金利がつかない時代に。
販売手数料は郵便局や証券会社などの運営コストを賄って、さらに利益を求めるものだが、社員研修や管理体制強化は別にし、接客時のお茶や華美な資料などは無用。逆に、販売手数料を稼ぐために販売会社が無駄な営業をし、結果的に個人投資家を泣かせたことで回転売買が悪しき文化と認定された。最近だとノーロード(販売手数料ゼロ)も増えてきているため、個人投資家はそちらを選ぶべきだろう。

 

信託報酬

次に“信託報酬”がある。これは管理報酬のようなもので、預けている資産額に対し日々差し引かれるコストだ。それゆえ専門家は、「長期でかかってくる手数料のため、低いところを選びましょう」と口を揃えて言う。確かにその通りだが、他方で、そうとも言い切れない面もある。なお我が国の平均値は、アクティブファンド(調査・分析をして高い成績を目指す)では1.5%前後、パッシブファンド(インデックスファンドとも言い、決められた指数に連動させる)で0.3~0.5%程度か。
信託報酬は、運用会社や受託銀行(個人投資家の資産管理をする)、そして販売会社がもらう報酬であり、その配分は各社違う。個人投資家にとってコストであることは間違いないが、主となる運用会社は、運用成績を上げて資産規模を大きくして収入増を見込むため、個人投資家と運用会社の利害が一致した手数料とも考えられる。無論、広告宣伝や営業によって資産規模を巨大化する可能性もあるので注意が必要だ。

信託報酬の項で挙げた注意点、そして「そうとも言い切れない面」については、もう一つの手数料と共に、次回じっくりと紙面を割いて述べたい。

【2021.2.20記】代表取締役社長 澤上 龍

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