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「炭素文明論」
佐藤 健太郎著
新潮選書

 長期投資のリサーチでは、「広く、深く、遠く考える」作業が欠かせない。古今東西、世の中の森羅万象に幅広く興味を持ち、それらをできるだけ深く勉強していくのだ。そういった好奇心というか興味のおもむくまま、いろいろ学んでいく作業の積み上げが、長期投資の思考や発想に驚くほど威力を発揮する。

むろん、百科事典のようなあらゆる分野を網羅しようとする知識の蓄積とは違う。あくまでも自分がおもしろいと思える分野を掘り下げていく。勉強というよりは興味本位であれこれ書物を読み漁っているうちに、関心の範囲が横へ横へと広がっていくぐらいでいい。
 なにしろ長期投資は、これはと思う対象にのみ投資するものなのだから。すべての分野に精通する必要はない。
 思い起すに、当初は投資運用に役立つだろうと戦史の研究をはじめたものが、いつの間にか極限状態における人間の心理といったものを学んでいた。そして、気がついたら哲学や宗教そして、天文学までかじることになった。
 いろいろ学んできた中でも、技術の分野は専門家ではないながらも知りたいことだらけである。とりわけ技術の発展史ともなると、地政学的興味からもゾクゾクしてくる。もう長期投資を超えて趣味のようになっている。
 本書は「広く深く遠く考える」の観点で、それこそ飛びついた一冊である。「元素の王者が歴史を動かす」のサブタイトルではないが、「フムフム、なるほどそういうことか」の連続で、じっくり楽しませてもらった。

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