もうひとつの戦略教科書『戦争論』

もうひとつの戦略 教科書「戦争論」 守屋 淳 著 中公新書ラクレ

投資運用の仕事に携るようになって、マーケットでどう勝ち残っていくかを学ぼうと、戦史がらみの書物にのめり込んでいった時期がある。そこで出会ったのがクラウゼヴィッツの「戦争論」。
読んでいて、なるほどと納得がいく記述もあれば、しち面倒くさい表現に振りまわされて飛ばし読みしてしまった個所も多々ある。総じて判ったような判らないような混乱と消化不良で、ゲンナリしたのを覚えている。
そんな苦い思い出の「戦争論」だから、本書の著者である守屋氏には「よくもまあ、ここまで食らいついたね」と敬意を表したくなる。おかげで、難解といわれている「戦争論」が、かなり身近なものになってくれた。
そんな本書だが、2度めの読み返しに入って、ふと気がついた。クラウゼヴィッツには、まわりくどい表現が多いのも、欧米とりわけドイツ人の論理的思考の産物だということ。
われわれ日本人にとっては、「孫子」の方がよほど直截的で、すっきりと頭に入ってくる。逆に、ひとつずつ石を積み上げていくような思考パターンには慣れていない。だったら欧米人の論理的思考を学びつつ、「戦争論」に挑戦するのはどうか。そう頭を切り換えたら、あのまわりくどい記述がそれほど苦にならなくなった。
著者の守屋氏には申し訳ないが、本書でもって論理的思考の訓練をするのも、また良しである。