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アクティブファンド(以下、アクティブ)はインデックスファンド(以下、インデックス)に負けるわけがない…前回レポートでは、我が国の問題点である運用者と投資家顧客の非連携性を理由に挙げ、定説に反論する内容を記述した。さて今回は目を外に、海外の状況を見ていきたいと思う。果たして我が国と同じことが言えるのだろうか。

世界の投資信託残高はこの30年で30倍弱の規模へと著しい成長を遂げた。その要因は圧倒的残高規模を誇る米国の株価上昇、そして年金制度などを後押しに投資家顧客の資金流入があったからだ。30年で4000兆円を超える莫大な残高増加を見たわけだが、そのうち非アクティブの割合は決して少なくない。例えば米国では株式投信におけるインデックス(含ETF)の割合が4割にも達しており、世界的にも運用のパッシブ化は加速的に進んでいる。その最たる理由が投資家の低コスト志向である。インデックスが成長し始めた80年代以降、投資家顧客から見たコスト、つまり金融機関から見た収入は売買時の手数料から財産に対する報酬へと置き換わっていった。現在米国では手数料ゼロの投信が6割以上を占め、報酬についてもインデックスの台頭で低くなってきている。低コスト化が進むほど投資家はさらに低いものを求めたくなるもの。投信の選ばれ方は、運用の腕ではなく目に見えるコストに移ってしまったのだ。

周知の事実であるが、米国の平均株価は30年で10倍となっている。 複利利回りに換算すると年率8%である。それだけの利回りがあれば、100年に一度の世界的金融危機と言われるリーマンショックの暴落期間も含め、低コストのインデックスを黙って長期保有しておくだけで十分な財産を得られたはず。我が国のように30年経って株価が下がっている状況とは違うのだ。しかし意外にも米国の個人投資家の投信平均保有期間は4年に満たず、我が国と大差のない短さなのである。それはおそらく個人投資家が無駄に投資の分散化を図った結果、株価に追随する売買を繰り返してしまったからだろう。それが理由からか、市場平均の利回り以上のパフォーマンスを享受した個人投資家は少ないと言われる。

財産を世界の経済成長に乗せ、自身は仕事や趣味に集中できることが投信の本来意義であろう。しかしながら投資家が3~4年毎に相場を見つつ売買するのであれば、プロの運用者は必要ない。インデックスの台頭が故か、それとも3~4年という売買周期が先かはわからないが。結局のところ、世界においても我が国同様に運用者と投資家顧客の連携が成されていないことが分かる。昨今はAIによるロボット運用などの流行で二者の距離が更に開いていく方向だ。投信が単なる商品扱いされていることが問題である。常々言い続けていることだが、投資運用の先には企業がおり、その先には我々自身の生活があるのだ。実体経済と金融経済の乖離が10年前の世界的株価暴落を呼んだのであれば、いずれまた、世界は辛い歴史を繰り返すのだろう。つづく。

【代表取締役社長 澤上 龍】

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