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新著(年内出版予定)の紹介文掲載も4度目となった。【一章-長期運用】の後半は、マクロ分析から売買時の心理効果、そしてトレーディング実務の紹介である。変わらずAIによる紹介文は劇場型であるが、実際の新著はもっと読者に寄り添ったものとなる。


 

合理的に判断しているつもりでも、人は無意識のバイアスに誘われ、損をするようにできている

理論も技術も学んだ。それでも運用が狂うのはなぜか。本章がここで名指しするのは、市場ではなく——投資家自身と、その足元に潜む「見えない伏兵」である。数式では決して捉えきれない、心理と現場の領域だ。

なぜ預貯金信仰の人ほど、いざ投資を始めると「自分は大丈夫」と過信するのか。なぜマクロを理由にした売買の多くは「後付けの説明」に過ぎないのか。そして——あなたが1,000株を売るだけで、なぜ株価は動いてしまうのか。

「人は利益を早く確定し、損失は確定を恐れて抱え込む——プロスペクト理論の罠」「マクロは“当てる対象”ではなく、“織り込む前提”である」「トレーダーの仕事は、ただ一つ——最良執行に尽きる」

本章が光を当てるのはマクロ経済との向き合い方だ。金利・インフレ・成長・技術革新・地政学——それらを「当てる対象」ではなく「織り込む前提」として捉え直す。鍵は予測ではなく制約条件の理解にある。問うべきは「来期の金利が何%か」ではなく、「金利がどの水準に定着し、企業の資本効率にどんな圧力をかけるか」だ。金利上昇は市場を一様に押し下げるのではなく、高収益企業と低収益企業の格差を広げる力として働き、インフレは価格転嫁力の試金石となる。さらに一時的な景気減速と、後戻りしない低成長への移行(レジーム変化)を峻別できるかが問われる。マクロを口実にした売買の多くは「後付けの説明」に過ぎない——本章はそう言い切る。

続いて俎上に載るのは投資家自身だ。カーネマンらが解き明かした人間の非合理性——損失回避・アンカリング・確証・過信・群集心理という五つのバイアス。AIブームへの同調も、2024年夏や2025年春の急落での狼狽売りも、その罠の産物にほかならない。そして最後に、普段は決して表に出ない「執行の現場」。バイサイドのトレーダーが挑む最良執行、自らの大口注文が価格を押し上げるインパクトコスト、ダークプールに潜む流動性——わずか1円の削減が塵も積もって運用成績を左右する。

これらに共通する解は意外なほど静かだ。資産形成の目的を明確にし、事前にルールを定め、市場のノイズとは付かず離れず——複利という最大の果実を狼狽売りで手放さないこと。敵の正体さえ知っていれば人は惑わされずにいられる。

これらの項は、さわかみ投信の現役アナリストとトレーダーが、現場の生々しい実務を注釈するかたちで綴った。理論の先にある「人間」と「執行」を描く、実践の一章である。

市場を読む前に、まず自分を読む。ノイズから、規律へ。読み終えたとき、あなたを一番揺さぶっていた相手の正体が、きっと見えている。

【2026.8.22記】代表取締役社長 澤上 龍

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